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自主的炭素市場の拡大に関するタスクフォース(TSVCM)

自主的炭素市場の拡大に関するタスクフォース(Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets;以降、TSVCM)は2020年9月に、国連気候行動特使・ファイナンスアドバイザーであるマーク・カーニーによって設立された。TSVCMは、パリ協定の目標を達成するために効果的かつ効率的な自主的炭素市場の拡大に関する取り組みを提言している。


主な提言として、

  • 1.5度の目標を達成するためには、2018-2050年までに570Gtの累積CO2削減する必要がある。

  • この目標を達成するためには、2030年までに温室効果ガスのネット排出量を23Gt削減する必要がある。(これは2019年の全石油消費による総排出量の1.5倍に相当する)。

  • カーボン・クレジットは、温室効果ガスの削減、吸収、隔離プロジェクトに資金を提供し、2030年の自主炭素取引市場の規模を15倍に拡大する必要がある。

  • グローバル大手企業が気候変動に関するコミットメントを大幅に増加させる必要がある。

を挙げている。


自主炭素取引市場拡大の課題


市場関係

  • 新規購入者にとって参入が難しい(例:カーボン・クレジットの購入には、市場や基準への理解、信頼できる価格設定などが必要である)。

  • 購入者はプロジェクトの品質やリスクがないと常に信頼することはできない。(例:大手企業は、品質を確保するために監査チームを設置する必要がある)。

  • リスク管理の手段が限られている(例:価格リスクを管理するための先渡契約の利用が限られている)。

  • クレジットのサプライヤーが利用できる資金やリソースが限られている(例:負担の大きい管理費やプロジェクト開発費、現地監査人の不足など)。

  • 企業がオフセット・クレジットに依存してしまい、実質的な削減対策を取らない。

クレジット品質

  • クレジットの価格が低いと、品質が懸念され、市場に信用しないと思われる。

  • クレジットの認証方法論の更新が必要(例:ベースラインの算出方法に不備がある、適切なガードレールが含まれていないなど)。

  • 古いクレジット(例:CDM)が市場に溢れ、全体的なクレジット価格の低下に繋がる。

  • 連結されていない登録機関や第6条交渉をめぐる不確実性から、二重計上の懸念が生じる。

  • 企業がオフセットを利用する際の透明性の欠如やクレジット取引プラットフォームの信頼性への懸念がある。

規制関係

  • コンプライアンス市場は自主炭素取引市場と相互に依存している。コンプライアンス市場の動向は、自主炭素取引市場の需要に大きな影響を与える。

  • パリ協定第6条をめぐる交渉は、不確実性をもたらしている。自主炭素取引市場と国が決定する貢献(NDC)との相互関係が明らかになるまでは、自主炭素取引市場に参加することをためらう企業は少なくない。


以上のような課題があるが、地球温暖化の進行に伴い、企業の環境対策や排出量削減に取り組むことが望まれており、今後民間セクターにおける取引市場がますます拡大し、カーボン・クレジットの取引数は増えていくと考えられる。



Source:

TASKFORCE ON SCALING VOLUNTARY CARBON MARKETS, JANUARY 2021

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