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ネットゼロに向けた炭素市場(パリ協定6条)の活用が不可欠

背景

気候変動対策は、世界が直面する最も緊急かつ重大な課題の一つである。世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃以内に抑制するという目標を達成するためには、各国の積極的な温室効果ガス排出削減が不可欠である。しかし、各国の削減能力と目標には大きな差異があり、国際的な協力メカニズムが求められている。そのため、パリ協定6条はネットゼロ目標の達成に向けた更なる削減・吸収を国際的な協力を通じて促進することを目的とし、国際的な炭素市場を通じて気候変動対策を促進する重要な枠組みとして注目されている。

炭素市場、パリ協定6条

パリ協定6条とは

パリ協定6条は、国際的な排出削減協力のための市場メカニズムを規定する重要な条項である。この条項は、各国が自国の温室効果ガス排出削減目標(NDC)を達成するために、国際的な炭素取引や協力的アプローチを可能にする法的枠組みを提供している。具体的には、国家間での排出削減クレジットの移転、持続可能な開発に寄与する国際的な排出削減メカニズム、および二国間・多国間の協力的アプローチを定めている。また、各国が6条に沿ったクレジットの供給量を増やすことで、パリ協定の元での炭素市場を本格化させることに繋がる。


6条4項メカニズムとは

パリ協定6条4項は、パリ協定締約国会議(CMA)の管理下で、緩和と持続可能な開発の支援に貢献するメカニズムが設立される。持続可能な開発メカニズム(Sustainable Development Mechanism: SDM)、持続可能な緩和メカニズム(Sustainable Mitigation Mechanism: SMM)と呼ばれることもある。このメカニズムの特徴は:

・持続可能な開発に貢献する排出削減プロジェクトの認証

・厳格な二重計上防止ルールの適用

・世界全体の排出削減に確実に貢献する仕組み

・民間セクターの参画を促進する枠組み


期待される削減・経済効果

パリ協定6条の実施により、以下のような削減・経済効果が期待されている:

・世界全体の排出削減コストの大幅な低減:異なる国や地域間での効率的な排出削減取引により、気候変動対策の経済的負担を軽減できる。

・技術移転と持続可能な開発の促進:途上国における低炭素技術の導入と発展を支援し、経済的機会を創出する。

・国際的な協力による排出削減の加速:各国が協力して排出削減に取り組むことで、より野心的な気候変動対策が可能になる。

・CO2削減効果:2030年までに世界全体で年間最大で40億~120億トンCO2の追加的削減が実現されうるとの試算がある。

・経済効果:グローバルな脱炭素市場や民間投資が活性化することにより、世界的な排出削減と同時に各国の経済成長にも貢献し、2030年時点で約50兆円の市場規模が見込まれる。


まとめ

パリ協定6条は、国際的な炭素市場を通じて気候変動対策に革新的なアプローチをもたらす重要な枠組みである。効率的な排出削減、技術移転、持続可能な開発の促進など、多面的な効果が期待されている。各国がこのメカニズムを積極的に活用することで、地球規模の温室効果ガス削減目標達成に向けた重要な一歩となるだろう。

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