食品業界のカーボンフットプリント(CFP)算出は、持続可能な開発目標(SDGs)や脱炭素社会を目指す国際的な取り組みが進む中で、環境に配慮した製品やサービスを求める消費者ニーズの高まりが背景にある。食品業界は農業生産から加工、輸送、販売、廃棄まで、多くのステージで温室効果ガス(GHG)を排出している。そのため、CFPを算出することにより、製品のライフサイクル全体を通じてGHG排出量を明確にし、削減する手法や対策を講じることが求められている。
EUをはじめとする各国の政府や国際機関による規制が強化されており、企業は食品のCFPを開示する義務が増加している。また、エコラベルやCFPを表示する製品に対する消費者の関心が高まっており、透明性を示すことが競争力の源になることがある。さらに、環境負荷低減の一環として、企業のCSRの一環としてCFP算出が重要視されている。直近、国内では、加工食品メーカー向けに、製品ごとの出荷までの二酸化炭素(CO2)排出量を示すCFPの算定に関する指針を策定し、食品産業全体での脱炭素を後押しする。
カーボンフットプリント算出のメリット
・環境意識の高い消費者層の獲得:近年、特に若い世代を中心に環境意識が高まっており、持続可能な商品やサービスを選ぶ消費者が増えている。CFPを明示することで、環境に配慮している製品であることをアピールでき、環境保護を重視する消費者層を引き寄せることができる。これにより、新しい顧客層の獲得が期待でき、購買率の向上に寄与する。
・ロイヤルカスタマーの増加:消費者は、共感を持つブランドに対して長期的な信頼関係を築きやすく、ロイヤルカスタマーとしての定着率が上がる傾向にある。CFPを積極的に公表し、環境保護に努める企業は、特に環境意識の高い消費者の支持を受けやすく、リピート購入率の向上が期待できる。
・差別化による競争優位性の確保:同じカテゴリーの製品が市場に多く存在する場合、環境に配慮したアプローチが消費者にとって大きな差別化ポイントとなる。競合他社がまだCFPを明示していない場合、それを早期に実施することで、競争優位性を確保できる。結果として、選ばれる製品となり、購買率の向上が期待される。
・ブランドの信頼性と透明性の向上:CFPを算出し、その結果を公表することで、企業が環境に対する責任を果たしていることを明確に伝えられる。透明性のある情報開示は、消費者の信頼を高め、他社との差別化を図る重要な要素となる。信頼性が高まることで、既存顧客のロイヤルティが向上し、再購入の機会も増加する。
・消費者教育による購買行動の変革:CFPの情報を消費者に提供することで、環境に対する認識や意識を高め、購買行動に影響を与えることができる。消費者が製品のライフサイクルを理解し、環境負荷の少ない製品を選択するようになれば、企業の環境負荷軽減の取り組みが消費者との共感を生み、購買意欲を向上させる。
・レビューやSNSでの好意的な評価:CFPの明示や、環境への配慮を示す行動は、レビューやSNSなどでの好意的な口コミや評価につながる。こうした評価は他の消費者に対して強い影響力を持ち、新規顧客の購買意欲を高める重要な要素となり得る。消費者の声がブランド認知度を高め、結果的に購買率の向上に寄与する。
カーボンフットプリント算出の流れ
CFPの算出は、製品のライフサイクル全体(LCA:ライフサイクルアセスメント)に基づいて行われる。以下はその一般的なステップである。
・目標と範囲の設定:算出対象とする加工食品の範囲を設定し、どのステージをカバーするかを決定する(例:原材料調達、製造、輸送、販売、使用、廃棄)。
・データ収集:原材料やエネルギー使用量、輸送距離、包装、廃棄に関するデータを収集する。サプライチェーン全体の協力が不可欠である。
・GHG排出量の算出:収集したデータを元に、各段階での温室効果ガス排出量を算出する。国際規格に基づいた算出を実施する。
・ライフサイクル全体の評価:各段階での排出量を合算し、製品全体のCFPを評価する。
・報告と改善策の検討:算出結果をもとに、削減可能なステージを特定し、改善策を検討する。
算出事例
・飲料業界:ある飲料メーカーがCFPを算出した例では、製品のGHG排出の大半が原材料の調達および包装材の製造過程で発生していることが明らかになった。この結果を受け、再生可能な包装材の導入や輸送距離の削減が行われ、排出量の削減が実現した。
・食品加工業者:パン製造会社が、製造過程におけるエネルギー消費量と包装材の使用量を削減するための施策を講じる際、CFP算出を実施した。この結果を基に、エネルギー効率の高い設備に投資し、廃棄物削減のための取り組みが行われた。
※株式会社テックシンカーは、食品のカーボンフットプリントの算出から、ブランディング支援までワンストップで支援し、企業様の売上UPに貢献しております。
Comments