アンケート調査背景
近年、気候変動への対応と持続可能な経営は、企業経営における最重要課題の一つとなっています。本調査は、日本企業におけるグリーントランスフォーメーション(GX)の推進状況と直面する課題を包括的に把握することを目的に実施されました。
【調査概要】
調査期間:2024年11月1日から2024年11月15日(2週間)
調査方法:(Web調査) 匿名回答方式によるアンケート調査
調査人数:有効回答数:209人
・大企業:87人(資本金10億円以上)
・中小企業:122人(資本金1億円以上10億円未満)
回答者の属性
・役職:経営企画部門、サステナビリティ部門、環境管理部門の責任者および担当者
・職位:部長、課長、担当者レベル
【調査結果】
取引先からのGX推進要請状況
・取引上の必須条件(31%)
・可能であれば対応してほしい(36%)
・今後出てくると思う(29%)
・今後出てくると思わない(3%)
・わからない(1%)
GX推進における主な課題(複数選択可)
・コスト負担 (65%)
・専門人材の不足 (42%)
・GX推進の複雑さ (32%)
・社内の意識改革 (28%)
各段階における具体的な課題
1. 測定段階
1.1 GHG排出量の可視化方法
・外部企業、コンサルティング会社への算定依頼(47%)
・自社で算定(21%)
・SaaSシステムを活用(12%)
・まだ実施していない(20%)
1.2 測定における主な課題(複数選択可)
・社内リソース不足 (55%)
・専門知識不足 (51%)
・データ収集と管理 (43%)
・算定結果の精度・信頼性の確保(32%)
・社内外との連携(24%)
1.3 測定に求める支援(複数選択可)
・社内外への情報発信支援 (58%)
・自社の工数削減 (52%)
・排出ホットスポットの特定と削減対策の立案 (48%)
・社内外の体制構築(35%)
・算出結果のクリティカルレビュー(26%)
2. 削減段階
2.1削減目標の設定状況
・2030年までに46%以上削減(16%)
・2050年までにカーボンニュートラル(22%)
・具体的な目標未設定(62%)
2.2 削減戦略の主な取り組み(複数選択可)
・再生可能エネルギーへの転換(68%)
・エネルギー効率の改善(62%)
・サプライチェーンの脱炭素化(45%)
・J―クレジット、カーボンオフセットなど(42%)
・革新的技術の導入(12%)
2.3 削減段階における主な課題(複数選択可)
・技術的制約と既存生産プロセスの見直し (64%)
・投資コスト (58%)
・削減目標達成の難しさ (43%)
・サプライチェーンパートナーとの協働 (32%)
3. 情報発信段階
3.1 情報発信における主な課題(複数選択可)
・基準への準拠 (62%)
・投資家・ステークホルダーの理解促進 (53%)
・透明性の確保 (32%)
・グリーンウォッシングへの懸念 (22%)
・社内の合意形成(12%)
3.2 情報発信における具体的な取り組み(複数選択可)
・ESG報告書の作成(68%)
・ウェブサイトでの情報公開(62%)
・統合報告書の発行(45%)
・ステークホルダーへの情報共有(38%)
・メディアリリース(32%)
4. 低炭素製品・サービス事業の確立
4.1低炭素製品・サービス開発の現状
・既に低炭素製品・サービスを提供している(56%)
・開発中である(27%)
・計画段階にある(13%)
・検討していない:(4%)
4.2 低炭素製品・サービス開発の主な動機 (複数選択可)
・社会的責任の遂行(68%)
・新たな市場機会の創出(62%)
・競争力の維持(55%)
・規制対応(43%)
・投資家からの期待(32%)
4.3 低炭素製品・サービス開発における課題 (複数選択可)
・新規事業開発の不確実性 (72%)
・市場競争力の確保 (51%)
・収益モデルの構築 (43%)
・既存事業との統合 (25%)
・顧客の理解と受容(13%)
まとめ
本調査から、企業のGX推進においてコスト負担、専門人材の不足、および技術的課題が大きな障壁であることが明らかになりました。一方で、GXは単なる環境対策にとどまらず、企業の競争力向上や持続可能性の確保に直結する経営戦略と位置付けられており、外部パートナーとの協働や専門的な支援の重要性が一層高まっています。また、多くの企業が低炭素型製品やサービスの開発、積極的な情報発信に取り組んでおり、持続可能な社会の実現に向けた意識の高まりが顕著に見られます。
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