CDPの調査結果によると、気候関連リスクの削減に向けた投資は、企業に約1,650億米ドル以上の経済的利益をもたらす可能性があり、その利益は、投資に必要とされる約197億米ドルを大幅に上回ると推定されている。つまり、サプライチェーンにおける気候関連の機会から得られる利益が投資額を大幅に上回ることから、企業が気候リスク対策を早急に強化することは、経済的にもメリットがあると考えられる。
企業が挙げた主要な気候関連リスク要因には、炭素価格設定メカニズム(29%)、顧客行動の変化(22%)、既存製品やサービスに対する義務と規制(22%)が含まれている。これにより、企業の排出削減の取り組みは単なる規制遵守だけでなく、顧客行動の変化に応じた自主的な対応でもあることがわかる。
引用:HSBC と共同で発表されたCDPの最新レポート、Strengthening the chain Transform the Norm Industry insights to accelerate sustainable supply chain transformation, October 2024
持続可能なサプライチェーンの変革を加速させるための取組み
・サプライチェーン全体の可視化と評価サプライチェーン全体のCO₂排出量を見える化し、現状を把握する。各工程での環境負荷を定量的に評価し、改善の優先順位を明確にし、ライフサイクルアセスメント(LCA)を活用すると、具体的な目標設定ができる。
・サプライヤーとの連携と支援プログラムの実施サプライヤーの協力が持続可能なサプライチェーンには不可欠である。環境に配慮した取り組みを進めるサプライヤーに低金利融資やインセンティブを提供しサプライヤーが持続可能な改善を行いやすくする。例えば、エネルギー効率の高い設備や低排出の機械を導入するサプライヤーに対して、資金援助や助成金を提供することで、持続可能な機器へのアップグレードに伴う初期費用の負担を軽減する。これにより、サプライヤーの業務効率が向上し、排出削減が可能になる。
・持続可能な調達基準の設定サプライヤーからの調達に際して環境基準を設け、脱炭素やリサイクル率などの条件を定める。これにより、環境への配慮が取引先選定の一環となり、調達先が継続的な改善を目指すよう促す。また、契約更新や発注量において、基準に沿ったサプライヤーに対する優遇措置を設けることで、エンゲージメントを強化できる。例えば、契約更新の優先権、契約期間の延長、柔軟な支払いスケジュールなどの条件を付与し、サプライヤーとの安定した長期的関係を育み、持続可能な取り組みを奨励する。また、脱炭素化の進展が顕著なサプライヤーに対し、発注量を増やすことを約束し、サプライヤーに排出削減への取り組みを促す。
・社内外のステークホルダーへの教育と意識向上サプライチェーンの変革には、社内外の理解と協力が必要である。社員やサプライヤーへの環境教育プログラムを通じ、脱炭素や資源循環への理解を深め、意識改革を促す。また、持続可能性に対する会社の姿勢を示し、パートナーシップを築くために、定期的な情報共有や報告を行う。
・デジタルツールの活用と定量的モニタリングデジタルツールやIoT技術、ブロックチェーンなどを活用して、サプライチェーン全体でデータを収集・分析し、リアルタイムでの進捗管理や目標達成度の把握を行う。こうした透明性の確保により、環境負荷削減の取り組みが進みやすくなり、関係者への説明や評価も容易になる。
・サーキュラーエコノミーの要素を組み込む原料の調達から廃棄までを最適化し、廃棄物削減やリサイクルを推進する。製品の耐久性向上や、リユース・リサイクルを促進する取り組みを取り入れることで、持続可能な資源循環が実現する。
これらのアプローチを通して、サプライチェーン全体の環境負荷削減や、企業価値の向上を図ることが可能となる。また、進捗を定期的に測定し改善点を洗い出すことで、持続可能性の目標達成が加速すると考えられる。
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