CO2排出を「コスト」とみなしてICPの設定により、CO2排出量削減に資する設備投資を促進する

Internal carbon pricing(インターナルカーボンプライシング、ICP)は、組織が独自に自社の炭素排出量に価格を付け、何らかの金銭価値を付与することで、企業活動を意図的に低炭素に変化させることができる。

昨今、CO2の排出をコストとみなして独自にICPを付け、設備投資の判断に役立てる企業が増えている。企業は脱炭素化の流れに対応するため、CO2排出量の削減につながる投資を促進する狙いがある。




ICPの導入効果 <将来を見据えた長期的視野での低炭素投資・対策の意思決定> 低炭素化に向けた取り組みが将来事業に与える影響を経済価値換算⇒短期的な収益性にとらわれない意思決定が可能となる <世の中の動向に応じた柔軟な意思決定> 炭素価格という“レバー”のみを動かすことで低炭素投資の意思決定レベルを修正可能⇒内外環境変化に応じた低炭素方針の転換が容易になる <全社的な低炭素取り組みレベルの平準化> 部門でのCO2削減貢献の見える化により、報奨/ペナルティが認識しやすくなる⇒企業内部での活動ばらつきによる不公平感が解消される。 <低炭素要請に対する企業の姿勢を定量的に示す> 企業が認識する炭素価格を表現する⇒経済的成果と気候変動対策を両立して事業運営を行っていることを、対外的にアピール可能。

社内意思決定事例

1. 投資したい対策に対して、投資の意思決定が逆転するであろうICP価格を算出し、投資を促すことができる。例えば、EVはガソリン車に対してコストデメリットがあるが、ICPを設定することで差額が無くなり、EVを導入しやすくなる。 2. 再エネ(単年)は系統電力に比してコストデメリットがあるが、ICP設定することで差額がなくなり、再エネを導入しやすくなる。

海外企業の取組事例 1. Uniliverは将来の炭素税や排出取引制度を元にICP価格4,760(円/t-CO2)※40(€/t-CO2)で設定した。 活用方法: • 100万€を超える全ての設備投資決定のキャッシュフロー分析にICPを適用し、炭素コストの経済的影響を視覚化する。 • 各ユニットの予算から、排出量に応じてR&Dファンドに入金 2. アステラス製薬はICP100,000(円/t-CO2)で設定した。 活用方法 • インターナルカーボンプライスを投資基準の一つとすることで、低炭素投資を推進。具体的には、CO2削減コストがICP(100,000円/t-CO2)以下になる場合、投資を実施すると判断される。         

引用:環境省 インターナルカーボンプライシング概要資料


日本企業のICP価格設定 明治HD:5,000円/ t-CO2 日立:14,000円/ t-CO2 帝人:6,000 円/t-CO2 日本郵船:2,500円/t-CO2 明電舎:3,000円/t-CO2


最後に ICP制度はCO2削減量を金額換算し、環境経営に関わる設備投資の効果を評価しやすくすることで、環境投資の優先度を高める。CO2排出はコストとみなし、エネルギー効率が低い設備はコストが高いと評価されるため、省エネ機器を導入する際に、通常は電気代をいくら減らせるかを計算して投資に見合うかを判断するが、CO2の削減量もコスト削減分として扱うため、投資がしやすくなる。

ICPの取り入れにより、自社が脱炭素にシフトしていく仕組みになる。これにより、脱炭素の観点で利益が出る部門・設備に投資が可能になり、企業価値の向上につなげることが可能。