我が国のGHG排出量において、約2割を運輸部門が占めており、物流業界の削減努力がカーボンニュートラルの目標達成に大きな影響を与えている。国際的な気候変動対策の枠組みであるパリ協定などに基づき、多くの国がCO2排出量の削減目標及び規制を掲げている。例えば、欧州連合(EU)は自動車メーカーに対して厳しいCO2排出基準を設定し、多くの都市がディーゼル車の規制を進めている。そのため、物流事業者には脱炭素の推進が求められている。
さらに、持続可能な選択を求める消費者の意識の高まりにより、企業は環境への配慮が一層求められるようになった。これにより、物流事業者や運送会社は、環境に配慮した輸送手段の提供や、持続可能なサプライチェーンの構築に取り組む必要がある。
脱炭素化に向けた取組み
連結トラック輸送
連結トラックは一度に多くの荷物を運搬できるため、単位あたりの輸送コストを削減できる。例えば、通常のトラック2台で運ぶ荷物を1台の連結トラックで運べば、運転手の人件費や燃料費、道路使用料などのコストが削減される。また、連結トラックは一つのエンジンで複数のトラックを牽引するため、同じ量の貨物を運ぶ場合に比べて燃料消費量が少なくなる。これは、エンジンの効率的な使用や空気抵抗の減少によるものであり、結果的に温室効果ガスの排出量削減に寄与する。
スワップボディコンテナ車両導入
スワップボディコンテナ(Swap Body Container)は、取り外し可能なコンテナボックスを備えた車両で、トラックから簡単に積み降ろしができる特殊な車両である。トラックはコンテナの積み降ろし中に待機する必要がないため、稼働率が向上する。これにより、車両の稼働時間が増え、輸送効率が改善される。また、スワップボディコンテナは標準化されたサイズと形状を持つため、積載効率を最大化でき、異なる荷物を積む際にも柔軟に対応できる。空間の無駄を減らすことで、燃料消費量の削減やCO2排出量の低減が可能になる。さらに、鉄道輸送との連携が進むことで、道路輸送に比べて環境負荷の少ない輸送手段を活用することができる。
IoTを活用した空走行距離の削減
IoTセンサーを搭載した車両は、GPSなどを利用してリアルタイムで位置情報を提供する。この情報を物流管理システムと連携させることで、現在の車両の位置や稼働状況を把握でき、最適なルートの選定や空車回送の削減が可能になる。運行管理者は、空車での移動が発生しないように最適な配送計画を立てることができ、無駄な走行を削減し、燃料消費を抑えることができる。また、複数の荷主からの荷物を集約する共同配送などでは、IoTデータをもとに最適な車両とルートを選定し、効率的な配送を実現する。こうした空走行距離の削減により、燃料消費が抑えられ、結果としてCO2排出量の削減が実現する。効率的なルート管理と積載率の向上により、車両あたりの排出量が減り、物流業界全体での環境負荷が低減される。
カーボンオフセット
物流業界では、トラックや船舶、航空機を使った輸送過程でCO2が排出される。カーボンオフセットは、これらの排出量を他のプロジェクト(例えば、森林再生プロジェクトや再生可能エネルギープロジェクトなど)を通じて相殺することで、実質的にCO2排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す取り組みである。物流会社は、全体のCO2排出量を削減するだけでなく、排出削減が難しい部分をカーボンオフセットで補うことで、カーボンニュートラルを達成することができる。これにより、クライアントに対して環境に優しい輸送サービスを提供できるため、環境意識の高い企業との取引が促進され、競争優位性が強化される。また、環境に配慮した企業としてのイメージを強化することができる。
※株式会社テックシンカーは、物流業界における脱炭素化の推進及び物流サービスにおけるカーボンオフセットを支援しています。
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